今回のキーワード ゆうほう とは 有価証券報告書 作成
就職活動をしていると、“ゆうほう”という言葉を耳にする機会がありませんか?
正式な名称は、有価証券報告書といいます。会社では経理部門を中心に社内の情報を整理して作っています。
有価証券報告書って何? 経理部門はどんなことをするの?
有価証券報告書の概要
有価証券報告書を平易な言葉で表すと「会社のプロフィール&成績表」となります。
経理の人間は、短信で決算を発表して一息つけると思いきや、今度はこれを作ることになります。
第1 | 企業情報 | 業績概要/関係会社一覧 |
第2 | 事業の状況 | 事業や業績に関する説明 |
第3 | 設備の状況 | 設備投資の実績と計画 |
第4 | 提出会社の状況 | 自社株式の状況/役員一覧 |
第5 | 経理の状況 | 連結財務諸表/財務諸表 |
第6 | 提出会社の株式事務の概要 | 事業年度の基準日や総会の日 |
第7 | 提出会社の参考情報 | 四半期報告書提出日 |
有価証券報告書の概要や読み方のポイントは、別記事でまとめたいと思います。
経理部門が記載すべき項目
有価証券報告書の記載内容は、株式会社としての経営と経理に関する情報です。
会社にもよりますが、経理部門が大半の部分の原稿を作ります。経営に関する説明は経営企画部のような部署が担当することもあるでしょう。
経理担当者の担当外となるような第4に含まれる「コーポレートガバナンスの概要」のような項目を除けば、第1~第5までの大半は経理部門で作成している会社が多いと思います。
経理部における有価証券報告書の作成業務の実態
意外と地道に皆で分担して原稿を作っています
公認会計士(監査法人)や、外部の業者が勝手に作ってくれるわけでもなく、自社内で分担して原稿を作っています。
始めてこの事実を認識したとき、当たり前のことではあるはずですが、少し驚いたのを覚えています。勝手に誰かが作ってくれるわけないですよね…。
- (他部署とも調整し)誰がどの項目をいつまでに完成させるかを決める
- 各自が項目に記載する内容やその規程を事前確認する
- 各自が必要な情報を整理し決算前に関係者に対して事前依頼を行う
- ~各種決算処理が行われる~
- 関係者より依頼した内容の資料を受領する
- 受領した内容等をもとに担当する項目の記載を作成する
- 自社内でチェックを行う
- 監査法人(公認会計士)の監査を受ける
- 金融庁に提出する
提出期限:事業年度終了後から3ヶ月以内
青色で記載したところが、有報作成の実務を適切に行うために重要なポイントです。決算処理が行われる前に、いかに事前にどのような情報が必要かを理解し準備をするかが大事です。
少し極端ですが決算は成功・失敗は「始まる前に決まっている」と言えます。
有価証券報告書は法律(金融商品取引法)に定められた形で開示をすることが定められているのでどの会社も同じようなフォーマットで原稿を作ることになります。
実は、この原稿を作成するための入力画面は、プロネクサスか宝印刷どちらかの業者を使うことになります。ニッチな市場であり参入障壁も高いので、この2社のみが競合している状態です。
どちらにしても入力画面はエクセルやワードとは少し勝手が異なり、慣れないと使いにくい印象を受けると思います。たまに、ベテランで使いこなしている方がいて驚くことがあります。経理あるあるです。
記載内容が開示要領に沿ったものかを確認します
重要なのは、記載内容に間違いのないよう作成することです。
項目の記載をした担当者本人がチェックをするのはもちろんですが、経理部門内での複数人による再チェックが必要です。
また、有価証券報告書記載の内容は、法定監査(公認会計士による監査)の対象ですので、外部の目線でのチェックも入ります。ただし、財務諸表そのもの(経理関係)はチェックできても、会社の事業に関する記載(経営情報関係)は社外の人間ではわからないこともあるので、間違ったまま世に出てしまうリスクがあるのです。
外部報告する情報をまとめる大役です
外部というのは社外という意味です。これを目にするのは、投資家やアナリスト、銀行、取引先、消費者と様々です。
誰とっても重要な情報なので、間違った公表をしてしまうと、場合によっては新聞報道になるくらい大事になります。
有価証券報告書は、証券取引所に提出すると誰でも見ることができるようになります。同時に企業は自社のHPに掲載しますので、見たい会社の有価証券報告書はすぐに見つかります。「業績」や「IR」といったメニューを探して下さい。
有価証券報告書の作成は責任ある仕事だからこそ楽しい
ここまで読んで頂いた方は「なんだか大変そうだなぁ」と思ったかもしれません。
確かに手間がないと言えば嘘になります(笑)
しかし、会計基準や制度は完璧なものではないにせよ、読み手にとって意義のある情報は、項目を記載する一人ひとりの確かな知識や判断によって外部に提供することができます。
昨今、虚偽の記載や粉飾決算が大企業の信頼を揺るがすニュースが新聞で賑わっています。このようなときに、私達、経理に関わる者は「誰のために何を作っているのか」を思い出し、初心に帰ることが必要だと感じます。