今回のキーワード 経理 出世 管理会計
経理の仕事に就こうとしている人にとって、気になるのが自分のビジネスマンとしての将来像です。
まず、経理は「事務処理の仕事だから、出世しないんじゃないか」と考えている方がいるとしたらそれは勘違いです。安心して経理のスペシャリストになって欲しいと思います。
入社する会社をよく検討してから就職活動をしよう
どんなに仕事をがんばっても企業の平均年収が300百万円であれば稼げない
会社全体で利益が出ていないような企業に入社した場合は、そのなかでどんなに頑張っても限度があります。
平均年収ランキング(DODAより)
中小企業庁の調査結果を確認すると、大企業と中小企業の割合は以下の通りです。
大企業 | 中小企業 | |
企業数 | 99.7% | 0.3% |
従業員数 | 31% | 31% |
多くは例に漏れず、平均年収は大企業>中小企業となります。従業員数でいうと約3割の方が大企業に勤めており、この中でも業種、企業によって平均年収は差があります。
民間の給与階級別に考えたとき、年収700百万円以上といった上位10%に入るためには、経理であっても会社の平均給与(=給与水準)が高い企業に入社することに尽きます。
出世することでお金を稼ぎたいのであれば大企業に入社すること
経理は間接業務であり、収益を生む仕事ではありません。
つまり、何かしらの収益事業を行っている企業で、他部署が商品やサービスを売り稼いだお金から給与を出してもらう職種です。
経理部員に払われる給与の源泉は、企業の利益に他なりません。そして、間接部門の人間に安定して高水準の給与を払うことができるもの、安定している大企業に他なりません。
中小企業では、経理を幅広く学ぶことができ、決して無駄な経験にはならないと感じます。一方で、やはりよほど事業が上手くいっている会社でなければ、経理を始めとする間接部門には高い給与は出せません。
理由1:財務基盤がしっかりしてない場合、事業で減益となったときに人件費を削られやすい。
理由2:中小でシンプルな事業をやっている限り、複雑な会計処理や分析が不要となる。経理で高度な知識が不要となり給与水準が低くなる。
大企業の経理部のなかでは役割分担が存在する
経理処理をするだけでは自分の付加価値は低いまま
では、大企業に入社できたとして、どうすれば自分の付加価値を高くすることができるかを考えましょう。
入社してしまえば、職場で誰が将来のリーダー、将来の役員になるかが、何となく分かってくると思います。
経理スタッフをその役割から3つに選ぶと以下の通りです。
- 経営スタッフ系・・・事業の環境や会計処理による影響を踏まえた提案型の仕事を行う
- 専門職系・・・会計、税務の専門的な知識を有し企業内の適切な処理を行う
- 事務担当・・・定例的な経理処理、事務作業を行う実務担当者
将来、部門長や役員、CFO(最高財務責任者)になるような人は、経営スタッフと言われる人たちです。
経理に限った話ではないのですが、言われたこと、決まったことをやっている人が、人の上に立つことはありません。会社全体や他部門のことも考慮して資料作成や提案ができる人が信頼や信用を得ることになります。
専門職系として分類しましたが、専門知識を持って、他の人にできない仕事を担当することで、付加価値を生む人もいます。一般企業のなかにも、公認会計士や税理士といった難関資格試験に合格した人が、転職等で入社するパターンも増えています。こういった人も、経営スタッフ目線を持って働けば、出世することも十分考えられます。
そして、最後に事務担当と分類した方々がいます。主に定型的なルーチンワークを中心とした事務処理を担当します。業務内容次第ですが、一般職、派遣の方の仕事である場合が多いです。
残念ですが、稀に総合職の方でも、この事務処理をこなすことが自身の仕事と考えている方がいます。本来、将来の経営スタッフとして活躍することを期待されて入社しているはずですが、考えない仕事に逃げていては組織のトップになることはありません。
経理をバックグラウンドとした出世への道
事業分析(管理会計)を徹底して経営層に分かり易く
最後に、経営スタッフとなる経理担当者となるために必要な能力とお勧めしたい仕事内容をまとめます。
一度は必ず、その企業(グループ)にとってメインの事業の業績分析を担当すべきです。いわゆる管理会計の領域です。
- メイン事業の業績報告は経理部門の顔となる業務であり会社にとって重要
- メイン事業の分析を行うことで自分自身に会社の経営感覚が身に付く
もしあなたがその会社の経理のメインストリートを歩きたいと考えているなら、企業の中核となる事業の管理会計の仕事を志望しましょう。
重要な事業の担当であれば、会社全体にとって重要な意思決定のサポート業務があったり、責任の重い立場となります。だからこそ、この経験が周囲の信頼を勝ち取り、あなたを役職者へと押し上げます。
事業の管理会計の業務は、広い意味で単体決算、もしくは連結決算の担当者の業務になります。
【関連記事】経理の面白さ(単体決算編)|仕事内容の理解と志望動機の参考に
【関連記事】経理の面白さ(連結決算編)|仕事内容の理解と志望動機の参考に
そして、経理として最低限、専門的な知識を習得することも大事です。知識に裏付けされた判断ほど説得力があるものはありません。
- 会社の事業のために経理があることを意識した仕事をする
- 専門知識の習得と会社の事業に精通することが強さになる
社内で認められる経理スタッフは他部署や他社でも活躍できる
今回は、経理スタッフの出世というテーマでコラムを書きましたが、結局社内で認められる人は、転職市場でも評価が高くなると考えてよいです。
もし、会社の業績や労働環境が悪くなったとしても、経験があり応用が利く経理スタッフとしてのスキルを求める企業は多くあります。会社を選ぶ立場になることが人生のリスク回避になります。
会社のために人生を捧げる必要はまったくありません。ただし、自分のために努力することが、会社に貢献することにもなるのであれば、Win-Winの関係になれます。