今回のキーワード 経理 仕事内容 連結決算
私は、新卒で上場企業の総合職として入社し、経理部として一通り部内のローテーションを終えました。大企業の経理業務の集大成ともいえる「連結決算」業務についての説明と、就職活動に際してのアドバイスをまとめます。
「連結決算」の仕事内容とは
グループ会社の決算を合計して利益やお金を算出すること
決算とは、その企業の売り上げや経費、取引のすべてを集計し、その結果を算出することをいいます。結果とは、利益(儲け)であり、現預金の残高をはじめとする資産(お財布の中身)です。
【関連記事】経理の面白さ(単体決算編)|仕事内容の理解と志望動機の参考に
上述の関連記事の通り、企業は財務諸表をつくることでその結果を得ることができます。
連結決算とは、グループ経営をしている親会社がその結果を合算し、連結財務諸表をつくる作業になります。
単体決算とは、企業1つに対して決算業務を行うことです。
- 損益計算書・・・売上から経費を差し引き利益を算出する
- 貸借対照表・・・資産(持ち物)、負債(借りているもの)、資本(元手)の一覧表
連結決算は、各グループ会社の決算書を集め、合計した決算書を作る業務です。
- 連結損益計算書・・・グループ会社の損益計算書を合算等したもの
- 連結貸借対照表・・・グループ会社の貸借対照表を合算等したもの
つまり、連結財務諸表はグループに複数存在する企業を一体の企業として捕らえた売上、利益、資産、負債、資本を知ることができるようになります。
そのため株主や投資家は、グループ経営している企業の業績を、単体決算ではなく連結決算で判断します。
実際の職場ではどのようなことをするか
単体決算の担当と同じように基本的な決算実務関係の資料があります。
- 毎月の月次決算・・・毎月決算を行うことで、毎月の企業の成績を確認します。
- 決算結果の分析・・・財務諸表を作成したら、その結果を分析し報告します。
- 将来の業績予想・・・将来、財務諸表がどのような結果になるかを予想します。
さらに、連結決算特有の業務のうち代表的なものを列挙します。
- 会計制度変更対応・・・会計制度(法律)が変われば、その対応をします。
- 外部報告資料作成・・・証券取引所を通じて公表する財務情報資料を作成します。
決算を外部へ公表する連結決算の担当は、毎年行われる会計制度の変更に敏感である必要があります。決算の内容のうち、何をどのように集計するかが変わるか把握した上で、決算発表前の準備が必要になるからです。
そして、実際に外部へ報告する財務諸表や注記(捕捉の)情報を作成し、証券取引所へ提出します。
間違いが許されないので、緊張感のある仕事であることが想像できるかと思います。企業のホームページに掲載されている財務情報は、基本的に連結決算担当者が作成した数字です。企業グループの実態を正しく把握し、適切な開示をする経理部門の要です。
連結決算の面白さと志望動機
連結決算の仕事の魅力とは
連結決算の担当者は、単体決算の理解のうえに成り立つ連結固有の知識を習得する必要があります。経理経験がないと、初めから任されることはないと考えていいでしょう。
経理のエキスパート、またはそれに準ずる人間に期待させる適切な経理処理、グループ業績のコントロールを担います。自分の経理知識のさらなる向上と、それに伴う自身の市場価値の向上が期待できます。
また、自分たちが作った財務諸表が公表された瞬間に株価が動いたり、株式市場に与える影響も感じることができます。
- 特定の会社(部門)の業績が悪くなることが予想される結果がわかった
≫まずはそのような予想となった要因を確認します。それを簡潔にまとめて経理の部門長に報告します。部門長が何らかの対応できるかといった検討ができるように、必要な情報を提供します。
- 会計基準の変更が決まり、来期は全グループ会社で対応する必要がある
≫連結財務諸表にどの程度の金額が影響するかを調べます。また、連結決算担当者がどのような情報が追加で必要になるかを調べ、各グループ会社に案内・依頼をします。
- 決算日程が以前より短くなり、単体決算担当者の締め切りが短くなった
≫なるべく早い段階でその状況を共有し、事情を説明して対策を考える
連結決算は、業務の現場(営業やその他の部署の活動)から最も遠いところにある経理業務です。その距離をいかに縮めて情報を集めたり、業務の協力を得ることができるかが大事になります。
志望動機をどう考えるか
連結決算は、新卒の選考で志望することは少々敷居の高い業務といっていいと思います。ただし、ある程度経理の基礎知識があれば、連結を希望することは“経理のことがある程度わかっている”というアピールに繋げることができます。
新卒の選考では、経理への熱意と連結決算の重要性の理解をアピールします。転職活動においては、単体決算の理解を前提に連結決算への挑戦意欲をアピールするのが定石です。
「連結決算」を担当するにあたっての準備
書物による勉強や資格試験について
- 日商簿記検定1級(まずは3級で会計の世界を覗いてみましょう)
- “初学者でも連結がわかる”といった簡単に理解ができる書籍
連結決算は、日商簿記検定は3級、2級では勉強できません。それらを合格したのちに受ける1級の内容なります。3級2級と、首尾よく合格された方は、そのまま勉強を継続して1級を受けるとよいと思います。
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ただし、2級合格までに必要な勉強量の比にならないくらい、1級合格は大変です。おすすめは、2級合格後に、簡単に概要が理解できる連結決算の初学者用の書籍を読む程度にしておくということです。
就職活動をするうえでは、必要以上に細かな知識を完全に習得する必要はありません。実務は入社後に現場で覚えればいいのです。連結決算の内容を扱う書物のうち、1冊、読みやすそうなものを読んでみるといいと思います。
経営・商・経済学部の大学生であれば「財務会計論」を受講
「財務会計論」・・・会計処理の原則や、決算の位置づけを学べます。
企業の連結決算の位置付け、決算数値の公表がどのような規則に基づいて行われているかを理解してみて下さい。細かな会計規則を覚えることより、企業の決算発表が利害関係者(ステークホルダー)からどのような目線で見られているかを知ることが大事です。
その他の経理部業務の仕事内容については当ブログ以下記事を参照ください。
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